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ライソゾーム病等スクリーニング検査のパイロットテスト実施状況(令和6年度)

  • chir010520
  • 7月28日
  • 読了時間: 4分

更新日:8月7日



はじめに


令和6年10月1日〜令和7年3月31日にかけて、栃木県内で出生した新生児を対象に、「ライソゾーム病等スクリーニング検査のパイロットテスト」を実施しました。 


この検査は、重篤な進行性疾患であるライソゾーム病などを発症前に早期発見し、適切な医療支援やご家族の理解につなげることを目的としたものです。


本報告書では、検査の概要、結果、考察、今後の課題について、検討会での質疑も交えながらご報告いたします。


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一般社団法人 とちぎ子ども医療支援プロジェクト山形 崇倫代表理事より挨拶



令和6年度 ライソゾーム病等スクリーニング検査のパイロットテスト実施状況について

栃木県保健衛生事業団 技術部よりご報告(一部抜粋)



検査の概要


  • 対象児:令和6年10月1日〜令和7年3月31日に栃木県で出生し、新生児マススクリーニングを受検した児

  • 新生児マス実施人数:4,828名

  • 同意取得者:4,818名(同意率:89.9%)


本検査は、既存の新生児マススクリーニング(先天性代謝異常症など)と並行して実施されました。


小児科・精密検査医療機関・県の連携体制により、高い同意率と安定した運用が実現しました。


対象疾患と検査方法


検査では以下の疾患を対象に、血液中の特定マーカーを分析しました。

 

  • ファブリー病

  • ポンペ病

  • ムコ多糖症1型・2型

  • ALD(副腎白質ジストロフィー)


採取した乾燥血液ろ紙(DBS)を用いて、専用の分析機器で測定を実施しました。


検査結果の概要


再採血が必要と判定されたのは9名で、そのうち3名が精密検査へと進みました。


擬陽性疾患名

再採血対象

要精検者数

精密検査の結果

ファブリー病

1名

1名

ファブリー病

ムコ多糖症2型

6名

2名

2名とも → 異常なし

ポンペ病

0名

0名

対象者なし

ムコ多糖症1型

0名

0名

対象なし

ALD

2名

0名

対象者なし

  • 再採血率:0.02〜0.12%

  • 要精検率:0.06% → 全国の類似スクリーニング施設と同水準


発見された症例の意義


ファブリー病の症例では、赤ちゃん本人の確定診断に加え、ご家族(特に母親)の保因者診断や早期治療につながる可能性が高く、スクリーニングの社会的価値の大きさが示されました。 


これは、単なる個人の診断にとどまらず、「家族の健康管理への入り口」としても非常に重要です。



考察と課題


本検査では、スクリーニングから結果報告までを一連の流れとして完了できる体制が整備されました。


ALDの一部症例では、再採血時にマーカー値が正常化するケースがあり、カットオフ値近傍の症例に対する再評価が必要とされました。


遺伝子変異が確認されても、臨床的な疾患との関係が明確でないケースがあり、長期的なフォローアップの必要性も指摘されました。



会議での主な質疑応答(一部抜粋)

 

Q1:スクリーニングで陽性と出た場合、家族も検査対象になりますか?

A:はい。特にファブリー病など遺伝性疾患では、母親が保因者である場合が多く、家族全体の医療支援につながることがあります。

 

Q2:再採血になった時点で病気の可能性が高いということですか?

A:必ずしもそうではありません。数値が基準値付近であった場合、確認のために再採血を行うことがあり、精密検査で異常がなかった例もあります。

 

Q3:今回の陽性率や再採血率は他県と比べてどうでしたか?

A:全国の平均とほぼ同等です。検査の信頼性・妥当性が確認されました。

 

Q4:検査方法の見直しはありますか?

A:高精度な「タンデムマス法」導入も検討されていますが、機材・人材・予算面での課題があるため、今後の段階的な導入が検討されています。



今後に向けて

今後も検査データの集積と検証を進め、カットオフ値の再評価や新たな検査法の導入検討など、検査精度の向上を目指してまいります。


保護者の皆様のご理解とご協力のおかげで多くのお子さんに検査が実施できましたこと、心より感謝申し上げます。


<ライソゾーム病とは?>

ライソゾーム病は、細胞内で不要な物質を分解する酵素の働きに異常があることで、臓器や神経に障害が生じる先天性の代謝異常症の総称です。 

早期に発見することで、発症前から治療を始められる可能性があり、症状の進行を抑えることができます。


おわりに

令和6年度のライソゾーム病等スクリーニング検査のパイロットテストでは、制度運用の安定性と、臨床への有効性が確認されました。 


今後も、医療機関・研究機関・行政の連携のもとで、赤ちゃんの未来と家族の健康を守るスクリーニング体制の充実を目指してまいります。


引き続き、皆様の温かいご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。









 
 

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